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〔アイオワ州グライムス グレゴリオ暦2061年9月18日 10:19 p.m. -6〕
マイケとアンドレイは、二人の軍人に追われて警報の鳴り響く廊下を駆けていた。
軍人のうち一人はデイヴの部下、シャイニング。
「警備に軍属がいるなんて聞いちゃいない」
マイケは吐き捨てるように言った。
「こちらのミスだ。しかし、俺の手持ちではそこまでの下調べは出来ようがなかったということをわかって欲しい」
アンドレイは真っ直ぐに前を見てそれを言う。
マイケはアンドレイから目を背けた。
「言い訳を!」
「……ならば、君の言った通りにしよう」
「なにが」マイケはアンドレイを睨む。
「男を見せると言っている。俺はこのまま真っ直ぐに走って時間を稼ぐ。だから君は、その金を持って最短ルートだ」
「――ッ! こんな時に、はしゃぐんじゃないよ!」
マイケは廊下の角を左に曲がって直進するアンドレイと別れた。
しかし、軍人たちは皆マイケの後を追って左折する。
「アンドレイに構わず俺を追う? 何故だよ……ハッ!」
マイケは床を踏みしめて急制動をかけると、振り返り、そして叫ぶ。
「駄目だ! そっちに逃げちゃあ、駄目だ!」
「Aletheiaのポッド⁉ しまっ――」
遠くから聞こえたアンドレイの声は、けたたましい機関銃の掃射音にかき消されるようにして消えた。
「……畜生ッ!」
マイケはすぐさま逃亡を再開する。
と、その行く手を阻むようにして、マイケから見て向かって右のドアがガッと開く。
マイケはドアを避けんと左に逸れ、拳銃を構える。
ドアの奥からタンスが滑り出て廊下を塞ぐ。
マイケはタンスの上に左手をつき、飛び越える。
同時に銃口を右に。
だが扉の開け放たれた部屋の奥に、銃を構えたデイヴの姿を見止めると、左手にぐっと力を込め、高く飛び上がる。
デイヴの放った弾丸は宙返りするマイケを捉えきれずに壁に着弾。
マイケは空中で狙いをつけ、背後に迫る追手のうちの一人の足を撃ち抜く。
そして着地。
デイヴは廊下に出ると、ドアをバッと閉じ、シャイニングの進路を確保する。
シャイニングはデイヴの横をすり抜け、マイケに迫る。
マイケは横目でシャイニングが銃を抜いたことを確認すると、即座に体を反転させ、シャイニングに向かって駆けだす。
シャイニングが発砲。
マイケはサッと屈んで弾を避ける。
一気に距離を詰め、顎を蹴り上げる。
気絶し、倒れ込むシャイニングの胸倉を掴んで支える。
シャイニングの側頭部に銃口を押し当てる。
デイヴを睨む。
デイヴは笑った。
「ほう。仲間を見限り逃走を選ぶ判断力、私の部下を手玉に取るほどの格闘センス。兵士としては合格だな」
「なにを――」
「それでいて、私を脅かすほどのポテンシャルもないと見える。部下に欲しいものだ」
「自惚れを――!」
デイヴはシャイニングに構わずゆっくりとマイケに近づいていく。
マイケはシャイニングを引きずって数歩後退するが、デイヴに間合いに入られるより先に引き金を引く決心がつきそうもないことを悟ると、シャイニングを放し、壁を蹴ってデイヴの背後に回り込む。
両手をデイヴの両耳に思い切り叩きつける。
デイヴはそれをサッとかわす。
そして、マイケの腹に力強く拳を打ちつける。
マイケの意識は途絶えた。
〔アイオワ州グライムス グレゴリオ暦2061年9月18日 10:24 p.m. -6〕
褐色肌の少女と黒肌の青年は、二人の軍人に追われて警報の鳴り響く廊下を駆けていた。
軍人のうち一人はハロラン。
「警備に軍属がいるなんて聞いちゃいない」
少女は吐き捨てるように言った。
「こちらのミスだ。しかし、俺の手持ちではそこまでの下調べは出来ようがなかったということをわかって欲しい」
青年は真っ直ぐに前を見てそれを言う。
少女は青年から目を背けた。
「言い訳を!」
「……ならば、君の言った通りにしよう」
「なにが」少女は青年を睨む。
「男を見せると言っている。俺はこのまま真っ直ぐに走って時間を稼ぐ。だから君は、その金を持って最短ルートだ」
「――ッ! こんな時に、はしゃぐんじゃないよ!」
少女は廊下の角を左に曲がって直進する青年と別れた。
しかし、軍人たちは皆少女の後を追って左折する。
「アンドレイに構わず俺を追う? 何故だよ……ハッ!」
少女は床を踏みしめて急制動をかけると、振り返り、そして叫ぶ。
「駄目だ! そっちに逃げちゃあ、駄目だ!」
「Aletheiaのポッド⁉ しまっ――」
遠くから聞こえた青年――アンドレイの声は、けたたましい機関銃の掃射音にかき消されるようにして消えた。
「……畜生ッ!」
少女はすぐさま逃亡を再開する。
と、その行く手を阻むようにして、少女から見て向かって右のドアがガッと開く。
少女はドアを避けんと左に逸れ、拳銃を構える。
ドアの奥からタンスが滑り出て廊下を塞ぐ。
少女はタンスの上に左手をつき、飛び越える。
同時に銃口を右に。
だが扉の開け放たれた部屋の奥に、銃を構えた背の高い軍服の男の姿を見止めると、左手にぐっと力を込め、高く飛び上がる。
軍服の男の放った弾丸は宙返りする少女を捉えきれずに壁に着弾。
少女は空中で狙いをつけ、背後に迫る追手のうちの一人の足を撃ち抜く。
そして着地。
軍服の男は廊下に出ると、ドアをバッと閉じ、ハロランの進路を確保する。
ハロランは軍服の男の横をすり抜け、少女に迫る。
少女は横目でハロランが銃を抜いたことを確認すると、即座に体を反転させ、ハロランに向かって駆けだす。
シャイニングが発砲。
少女はサッと屈んで弾を避ける。
一気に距離を詰め、顎を蹴り上げる。
気絶し、倒れ込むハロランの胸倉を掴んで支える。
ハロランの側頭部に銃口を押し当てる。
軍服の男を睨む。
軍服の男は笑った。
「ほう。仲間を見限り逃走を選ぶ判断力、私の部下を手玉に取るほどの格闘センス。兵士としては合格だな」
「なにを――」
「それでいて、私を脅かすほどのポテンシャルもないと見える。部下に欲しいものだ」
「自惚れを――!」
軍服の男はハロランに構わずゆっくりと少女に近づいていく。
少女はハロランを引きずって数歩後退するが、軍服の男に間合いに入られるより先に引き金を引く決心がつきそうもないことを悟ると、ハロランを放し、壁を蹴って軍服の男の背後に回り込む。
両手を軍服の男の両耳に思い切り叩きつける。
軍服の男はそれをサッとかわす。
そして、少女の腹に力強く拳を打ちつける。
少女の意識は途絶えた。