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〔アイオワ州グライムス グレゴリオ暦2061年9月20日 08:43 p.m. -6〕
マイケが目覚めた頃、外はすでに日が落ちていた。
彼女が捕らえられた留置所を含むアイオワの軍事施設は各所に備えられた照明であちこち照らされていたが、ちょうどその影になっている場所で数名の兵士たちがたむろしていた。
「マルムスティーンのやつめ、おちょくってくれちゃって……」
「アレーテイア・クライシスの首謀者が、一体全体、なんのつもりで軍を呼ぶのかよ」
「だからぁ、遊んでるつもりなんだろぉ?」
「ならどういう遊びか。あの盗人はなにか」
「よりにもよってあのマルムスティーンに嵌められて、おまけに仲間をセキュリティにやられる。犯罪者とはいえ、あの娘が気の毒に思えてもくる」
「よさないか。そうやって、あちこち同情してまわっている余裕は今この国にないということぐらい分かれよ。罪人も、苦労人も、いっぱいいるんだ。割り切れよ」
「……そうは言っても、だったら何のための軍隊か分かったもんじゃないよ」
「ん、お勤めだろう」
「そんなに上手く割り切れたもんでもない。小銭のためには死ねん」
「それもそうか。まあ、あまりセンチメンタルな気分にならない分にはよかろうよ」
「そうだ。娘っ子一人に鼻の下伸ばしてる分にはなんら問題はない」
「そういうつもりで言ったんじゃないぞ」
「俺もお前をおちょくるつもりで言ったわけじゃない」
「そうか。あーかわいそかわいそ……ああ、娘というと女だが、さて、俺の下の心に適うだろうか」
兵士はそう呟くと、徐に暗闇に包まれた己がズボンのチャックに手をかけ、下げた。
隣に立っていた兵士は、その様子をチラチラと見ていた。
そして、ポケットからフィルムカメラをスッと取り出し、親指でシャッターボタンに触れた。
「……それで結局、あの通報はどういうつもり――」
と、その時。
施設全体に警報が鳴り響く。
兵士たちは、急いで各々の持ち場へと駆けていく。
少女が目覚めた頃、外はすでに日が落ちていた。
彼女が捕らえられた留置所を含むアイオワの軍事施設は各所に備えられた照明であちこち照らされていたが、ちょうどその影になっている場所で数名の兵士たちがたむろしていた。
「マルムスティーンのやつめ、おちょくってくれちゃって……」
「アレーテイア・クライシスの首謀者が、一体全体、なんのつもりで軍を呼ぶのかよ」
「だからぁ、遊んでるつもりなんだろぉ?」
「ならどういう遊びか。あの盗人はなにか」
「よりにもよってあのマルムスティーンに嵌められて、おまけに仲間をセキュリティにやられる。犯罪者とはいえ、あの娘が気の毒に思えてもくる」
「よさないか。そうやって、あちこち同情してまわっている余裕は今この国にないということぐらい分かれよ。罪人も、苦労人も、いっぱいいるんだ。割り切れよ」
「……そうは言っても、だったら何のための軍隊か分かったもんじゃないよ」
「ん、お勤めだろう」
「そんなに上手く割り切れたもんでもない。小銭のためには死ねん」
「それもそうか。まあ、あまりセンチメンタルな気分にならない分にはよかろうよ」
「そうだ。娘っ子一人に鼻の下伸ばしてる分にはなんら問題はない」
「そういうつもりで言ったんじゃないぞ」
「俺もお前をおちょくるつもりで言ったわけじゃない」
「そうか。あーかわいそかわいそ……ああ、娘というと女だが、さて、俺の下の心に適うだろうか」
兵士はそう呟くと、徐に暗闇に包まれた己がズボンのチャックに手をかけ、下げた。
隣に立っていた兵士は、その様子をチラチラと見ていた。
そして、ポケットからフィルムカメラをスッと取り出し、親指でシャッターボタンに触れた。
「……それで結局、あの通報はどういうつもり――」
と、その時。
施設全体に警報が鳴り響く。
兵士たちは、急いで各々の持ち場へと駆けていく。